2012年1月27日金曜日

富野由悠季 『機動戦士Zガンダム』4巻

富野由悠季
『機動戦士Zガンダム』4巻
1987,角川書店

55p
 人の潜在能力は、たしかに宇宙に生きるための能力をもつために残されていたのであろう。
 しかし、それが地球と引き換えに行われるのでは、人は不幸である。
 が、不幸は、人が変革するまで続き、幸福はその痛みの中から生まれるのであろう。
 それを神の試しと考え医師を充足することは容易だが、充足する間に地球が崩壊してしまう危機は、厳然として存在する。
 それを乗り越えるために、人はその知恵を授けられたと考えた。

69p
(カミーユ)「でも、悲しみって、我慢できるんですか?」
(アムロ)「オールドタイプは、ちょっと前の痛みを忘れて、次のことができる……。だから、同じ繰り返しができるのさ……」

216p
 出迎えは、左右に儀仗兵を従えた少女であった。
 「さっきの……?なんだ?マントをつけているのか?」
 カミーユには、その少女の黒っぽいコスチュームが、ひどく挑戦的なものに見えた。
 その少女の瞳が、ゆったりと一同を観察し、そして、そのしなやかな体が前に出た。
 「代表は?」
 少女は、とても大人びた声を出した。
 「……ああ……!」
 カミーユは、感動した。
 裏切られたと感じるよりも、儀仗兵を従えた少女ならば、ややハスキーな声の方が似合うと感じたのだ。

222p
(シャア)「ミネバ様をよくもこう育ててくれた!偏見の塊の人間を育ててなんとする!」

229p
 「メラニーは名誉職ばかりだ。つまり、年寄りのやる仕事を上手にやっている男ではある。彼の実権が見えない」
 ハマーンの指摘は正しいとカミーユには聞こえた。
 (ウォン)「……実権が見えるような処で仕事をやって、地球連邦政府を転覆させることができると思いますか?」

305p
 (ジャミトフ)「忌憚ないところを聞くが、その娘な?」
 シロッコは全部を言わせなかった。
 「はっ……お目障りでありましょうが、サラは、私のもう一つのセンサーです。繋がっております。外せません」
 「……!そういうことを聞きたかったのではない。口が堅い娘かと聞きたかっただけだ」

308p
 その人の意思と感性の狭隘さを突破するだけで、人は、ニュータイプになり得る。
 それが、ジャミトフの信条であった

310p
(シロッコ)「噂は、希望ですな。大衆の希望が、噂を生みます。噂は、事実を生む土壌でもあります。しかも、サイド2の13バンチ内では、得体の知れないもビル・スーツの動きもあると確認されていますその意味は何か考えました。……ミネバ・ザビは、本物でなくとも人を信じさせるような状態で、存在するということです」


311p
(ハサン)「精神医学と、バイオテクノロジーの進歩は、人間の尊厳などというものを、とっくに剥奪している。自然に死に、自然に生まれてくるから命の尊さに感動もするし、畏敬の念も生まれるのだが、精子と卵子をいじっている段階で、生まれた赤ちゃんを想像する医者なんていない。想像したら何もできなくなる」

2012年1月20日金曜日

富野由悠季 『機動戦士Zガンダム』3巻

富野由悠季
『機動戦士Zガンダム』3巻
1987,角川書店
目次

PART1  霧の中…17
PART2  ヒッコリーへ…29
PART3  シャトル発進…43
PART4  ニューホンコン…65
PART5  フォウという女…83
PART6  シンデレラ・タイム…109
PART7  サイコ・ガンダム…137
PART8  再出撃…155
PART9  回収…173
PART10 ジャミトフ・ハイマン…195
PART11 ジェリドの背後…213
PART12 ゼータ・ガンダム…233
PART13 密告…251
PART14 コロニーの落ちる日に…275
PART15 ウェーブ・ライダー…305
PART16 キリマンジャロ…323

25p
(シャア)「生きている間に生きている人のすることがある。それを行うことが、ララァに対しての手向けだ」

28p
「立派に父親になっている者もいれば、昔の影に捉われ逡巡している者もいるか……人は川っていくものだとララァはいったはずなのにな・・・」
ふと、シャアは、自分が感傷的になているのに気づいて苦笑した。
「……人のことは笑えんか……」
と……。

114p
「…ララァという敵がいた。ああいった敵と遭遇すると、身を滅ぼす……」

124p
訓練という枠のなかでフォウは確実に反射神経の研ぎ澄まされた人間になっていた。それは、日常的な人の行為の中で語る性質のものではなかった。
いつもいつもセンサーをどこかに貼り付けられて、睡眠中でさえも睡眠学習を施されて、時には、熟睡から強制的に起こされて学習チェックのテストをされてきた人生なのである。
それはマシーンを作るためのものだった。

157p
(ミライ)「夫婦ってね、信頼があるとちゃんと夫の影が写っているものなのよ。それを子供は分かってくれるわ」

199p
ジャミトフは、かつてのジオン公国のギレン・ザビの主義に共感する男である。
ジャミトフは、ギレンの主義は良かったのだが、やり方が間違っていたと信じる男であった。
独裁が見えすぎるのが良くなかったのだ。
大体、ジオン・ダイクンの意思を受ける体制を引き継がざるを得なかったギレンでは、もともと敗北を喫する要因を抱えているに等しかったとジャミトフは見ていた。
「頑冥な人々は、地球上で掃討し、無知無能な者は、コロニー開発に追い上げる。それが、地球上から人間を排除する方法なのだ。今となれば、地球に残りたがるエリート意識に凝り固まった選民は、危機に陥った地球に残して、飢えさせればいいのだ。が、そんな手段を講じているうちに地球が疲弊しすぎるという危機感があるからこそ、軍を組織して地球経済に打撃を与え、ついでに地球上の選民を抹殺する・・・・・・」
それがジャミトフの予定である。
その理論の一面は正しい。
しかし、物理的な手段を講じてしまうところに、ジャミトフの傲岸さがあった。
が、それもジャミトフ自身が認めているところなのだ。
「歳だ。いつ死んでもよい。私の死ぬまでに、地球圏に対して必須のことをやってみせる」
そのためにジャミトフは、一年戦争の終息と同時に、自身の血の類縁の全てと決別をして、ティターンズの組織作りに入ったのである。
「……時代が要求するのだ。でなければ、ジオン公国の旗揚げもなかった……」

217p
(シロッコ)「戦争を起こして、地球経済を徹底的に窮乏に追い込めば、地球上の人間は餓死だな。そうすれば、エゥーゴの言うとおりに地球から人間はいなくなり、地球は自然の手に戻るだろう」
(マウアー)「そのために戦争?ティターンズとエゥーゴは、同じ目的で戦っているのですか?」