2011年2月16日水曜日

砂糖のあるところに奴隷ありー川北稔『砂糖の世界史』


川北稔(1996)
岩波書店

関連項目
世界システム論
I・ウォーラーステイン
帝国主義
奴隷

目次

プロローグ 砂糖の不思議・・・1

第1章 ヨーロッパの砂糖はどこからきたのか・・・11

第2章 カリブ海と砂糖・・・33

第3章 砂糖と茶の遭遇・・・61

第4章 コーヒー・ハウスが育んだ近代文化・・・91

第5章 茶・コーヒー・チョコレート・・・113

第6章 「砂糖のあるところに、奴隷あり」・・・139

第7章 イギリス風の朝食と「お茶の休み」-労働者のお茶-・・・155

第8章 奴隷と砂糖をめぐる政治・・・177

第9章 砂糖きびの旅の終わりービートの挑戦ー・・・189

エピローグ モノをつうじてみる世界史ー世界史をどう学ぶべきかー・・・201

あとがき


引用
こうして、砂糖や綿織物のような「世界商品」は、地球上の人間の配置をスラ変えてしまいました。ダイエットの流行で、砂糖がむしろ警戒の目をもってみられ、ナイロンやビニールにはじまる化学繊維の登場で、綿織物がもはやそれほど重要ではなくなった今でも、それらの影響は強く残っているのです。8p

17世紀のイギリスの料理では、ありとあらゆる種類の香料をふりかけるのが大流行となりましたが、 78p


歴史を学ぶということは、年代や事件や人名をたくさん覚えこむことではありません。いま私たちの生きている世界が、どのようにして今日のような姿になってきたのかを、身近なところから考えてみることなのです 208p


メモ
アクィナス、シーナー、「砂糖は万能薬」
ジョン・ウェスレイ、お茶を飲むことに批判的

感想:
 砂糖がヨーロッパの世界にどう広がっていったのか、その経緯を中心に近代史の流れを描いた本。大航海時代、植民地、プランテーション、奴隷制度、三角貿易、産業革命などの用語がお互いにリンクしている様が砂糖に焦点を当てることでイメージとして伝わってきた。
 砂糖に対するイメージが時代で変わっていくのもおもしろい。大航海時代前までははその白さ・貴重さから神聖なものや万能薬としてのイメージが強く、時代が下ると舶来品として上流階級のステイタス・シンボルとなり、産業革命以降は庶民の必需品となる。さらに現代になると病気もとになるネガティブなイメージも強い。
 本筋の登場人物ではないが、スコラ神学のトマス・アクィナスやイスラム哲学のイブン・シーナー、メソジストのジョン・ウェスレーといったキリスト教関連の人たちも出てくる。切り口を変えてつむがれる歴史というのはまた違ったものに見えてくるなぁと思った

あわせて読みたい
コーヒーが廻り世界史が廻る―近代市民社会の黒い血液 (中公新書)
知の教科書 ウォーラーステイン (講談社選書メチエ)

0 件のコメント:

コメントを投稿